サッカー審判員が解説する「あの判定、おかしくない?」

リバプール&フロンターレのサポーターでもあるアマチュア審判員が、レフェリーのことや、実際の試合で下された判定についてのコメントをしていきます。 レフェリーの視点から見るサッカー、判定やルールのこと、レフェリーの考え方をお伝えしたい。そうして、よりサッカーを楽しんでもらいたい、より良い形でサッカーファンが増えてくれたら嬉しい。そんな思いで書いていきます。 実際の試合の判定について、疑問・疑念を抱いた方はぜひ聞いてください。 試合の情報をいただければ、一人のレフェリーとして、はぐらかさず真摯にお答えします

東海大星翔、幻のゴールはオフサイドか?【 第96回(2017/18)全国高等学校サッカー選手権大会1回戦 富山第一-東海大星翔】

 あけましておめでとうございます。ハイジです。

 ブログを始めてから色々と立て込んでしまい更新が滞ってしまいました。2018年は随時更新していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

 さて今回は、少し遡って12/31の高校サッカー1回戦、富山第一-東海大星翔について。

 結果は1-0で富山第一の勝利。高校サッカーというものは人生をかけた一発勝負ということもあり、勝利チームの喜びも敗退チームの悔しさも色濃く表れますね。

 東海大星翔は最後まで諦めない姿勢を見せ、ラストプレーでも同点のチャンスを作り出しましたが及ばず、敗退となってしまいました。

 

 さてこの試合、その東海大星翔にとって受け入れがたい判定がありました。77分(後半37分)に起きた"幻のゴール"です。 

 6番・中川選手のミドルシュートをGKが弾いたところ、11番・一選手が押し込んで同点かと思われましたが、オフサイドの判定により取り消されました。

 まずは映像をご確認ください。


高校サッカー選手権 東海大星翔vs富山第一 疑惑のシーン

 

 結論から言うと、これは明らかな誤審です。オフサイドの反則はありませんでした。

 

 詳しい解説の前に、まずはオフサイドのルールについておさらいしておきましょう。 

サッカー競技規則2017/18 第11条 2.オフサイドの反則

ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる

(以下略)

 

 これを今回のケースに当てはめると、6番・中川選手がミドルシュートを打つ瞬間に11番・一選手がオフサイドポジションにいればオフサイドの反則となる、ということになります。

 それではシュートの瞬間を画像で確認してみましょう。

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 画像の最上部にいる黄色いユニフォームが11番・一選手です。シュートの瞬間、11番・一選手はオフサイドポジションにはいません。

 

 ここでオフサイドポジションについても、ルールブックを確認してみます。

サッカー競技規則2017/18 第11条 1.オフサイドポジション

競技者は、次の場合、オフサイドポジションにいることになる:
◦ 頭、胴体、または足の一部でも、相手競技者のハーフ内にある(ハーフウェーラインを除く)、そして、
◦ 競技者の頭、胴体、または足の一部でも、ボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手競技者のゴールラインに近い場合

(以下略)

 

 簡単にまとめると「相手チームの後ろから2人目の選手より相手ゴールに近いところ」がオフサイドポジションです。今回で言えば以下のようになりますね。

f:id:alps_lfc_fro:20180108154612p:plain

 赤い斜線部がオフサイドポジションになります。(角度の都合上、少し見にくいかもしれませんが、)左のピンク色の丸で囲った11番・一選手がシュートの瞬間、オフサイドポジションにいないのは明白ですね。

 

 以上のように、今回の件はまったくオフサイドではなく、誤審により取り消されてしまった"幻のゴール"でした。このような初歩的な誤審が、重要な大会で発生してしまったことは非常に残念に感じます。

 もちろん審判も人間ですから間違いはあります、しかしこうした明らかな間違いはきちんと批判する必要があります。日本のサッカー界のためにも、審判のレベルアップのためにも、誤審はきちんと指摘していきたいですね。(批判は人格否定とは異なります。)

 

 審判に携わる立場からすれば、このようなミス1つでたくさんの人の人生が変わってしまう、というのは恐ろしいことです。逆に言えばそれだけ重要な任務であり、それが大きなやりがいでもあるのですが。

 

今回はこの辺で。

 

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小林悠選手が倒されたのはノーファウルか?【2017ルヴァンカップ決勝 セレッソ大阪-川崎フロンターレ】

 こんにちは。ハイジです。

 ブログをはじめてみました。あまり体裁にこだわらずに書いていきたいと思いますので、気軽に読んでいただければと思います。

 

 さて今回は、昨日のルヴァン決勝について。

 フロンターレサポの私は現地にいましたが、なんとも悔しい結果でした。「あそこでああしていれば」「あの時こうだったら」とどうしても"たられば"を並べたくなってしまいます。

 その"たられば"のひとつに挙げられるのが、65分、裏に抜け出した川崎フロンターレ小林悠選手がセレッソ大阪・木本恭生選手に倒されたプレーでノーファウルと判定されたシーンでしょう。

 

 映像を確認してみましたが、このノーファウルは正しい判定でした。

 確かに木本選手の手は小林選手の肩にかかっていました。しかし、その手にはそれほど力が加わっておらず、あのような倒れ方をする原因となったとは思えません。実際、正面からのリプレイでは、木本選手の手がほぼ外れてから小林選手が倒れたように見えます。「コンタクトはあったが、ファウルをもらおうとして意図的に倒れた」と判断するのが妥当で、ノーファウルでプレーを続けたのは正しい判定と言えるかと思います。

 

 このあたりの見極めは難しいのですが、さすが西村主審、といったところでしょうか。

 西村主審は激しいボディコンタクトを容認するタイプのレフェリーで、なるべくプレーを続けさせようとします。そういった判定基準だと、激しいプレーと不正なプレーの見極めが非常に難しいのですが、西村主審は不正なプレーを見逃すことは少ないですね。(もちろんたまにはありますが。)

 この西村主審の判定基準は、日本国内の基準だと多少緩く見えますが、国際基準から見れば一般的なものといえます。国際審判員に選出されるのも納得です。あるいは、国際審判員としての経験がそのような基準を作ったのかもしれませんね。

 

 ちなみに、意図的に倒れたのならシミュレーションではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが基本的にシミュレーションは、何もない状態からファウルをもらおうとする行為、と捉えられることが多いです。今回は、コンタクトはあり、ファウルとなるきっかけはあったが、そのきっかけを意図的にファウルに結びつけようとする行為ですので、シミュレーションを取らず、プレーを続けるという判断でした。

 ファウルとなるプレーを1とすると、

「0を1にしようとする行為」  →シミュレーションにより警告

「0.5を1にしようとする行為」→ノーファウルとしてプレーを続ける

といった感じです。

 

今回はこの辺で。

 

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